いど 【3000文字チャレンジ 井戸】

 

落語初心者、まめてんです。

落語、好きなんです。

お笑いより落語です。

でも、あんまり聞いてないので、詳しくありません。

生で落語を聞いたのも一度だけ。

5月の新潟虹色寄席、行きたいなぁ。

託児所あればいいのにな。

東京で寄席に行ってみたい。

 

今回は落語によくある、江戸時代のお話。

はじまりはじまり~。

 

 

 

 

うーん

頭が頭が痛い…

明るいな、もう朝か。

昨日は飲みすぎたな。

姉さんと久々の再会。

酒が進んで進んで。

江戸から越後に嫁いだ姉さんに会ったのは何年ぶりだろう。

ひぃふぅみぃ…15年ぶりか?

 

喉、乾いたな。

起きるか。

 

フラフラしてたら、姉さんの旦那の越次郎さんが話かけてきた。

「やいやー、京太郎さん。きんののばんは、ふっとつ飲んだねぇ。でーじょぶかね?」

 

…何を言ってるのか、さっぱり分からん。

でも、どうやら、心配してくれてるようだ。

「飲みすぎちまって。頭が痛いんスよ。水もらえますか?」

 

越次郎さんは、茶碗に水を入れてくれた。

「はいよー。これ飲んで、ゆっくり寝てくらっしぇ。

これから、田んぼに行って来るすけ」

 

おっ、田んぼに行くってのは、分かった。

ていうか、昨日あんなに飲んでいたのに、仕事かよ。

 

「ああ、京太郎さんや。うちの新之助が一緒に、いど行きたいってワガママ言って、わーりねぇ」

 

新之助は、姉さんと越次郎さんの子ども。

14歳だ。

その、新之助と俺が一緒に井戸に行く?

井戸って家の近くにあるじゃねぇか。

どういうことだ?

 

「んじゃ、行ってくるすけ~」

越次郎さんは、出かけていった。

 

姉さんも子どもたちも出かけたみたいで、この家には俺ひとり。

頭も痛いし、寝るとするか…

 

 

 

うーん

井戸が気になってきた。

俺と一緒に井戸に行きてぇってどういうことだ?

井戸に、なにかいいものがあるのか?

 

気になる。

 

頭は痛いが、気になる。

見に行ってみるか。

 

家の横にある井戸に来てみた。

なにか秘密があるのか?

 

見た目は、特になんにもない。

普通の井戸だ。

 

中か?

覗いてみても、分からない。

真っ暗。

おおーーーい、と言ってみたが、返事なし。

 

うーん、何度見ても、なんてことない井戸だ。

やっぱり中か。

 

井戸の底になにかあるのか?

 

 

ずるり。

 

「あーーーーーーーーーーーーーっ」

 

 

 

なんてこった。

深く覗きこみすぎて、井戸の中に落ちてしまった。

 

なんだよ、もしかして、ここで死んじまうのか。

勘弁してくれよ。

 

ああ、この井戸深いな。

なかなか落ちねぇ。

もうダメか…

 

 

久々に姉さんに会えて、嬉しかったよ。

5人きょうだいの一番上が姉さんで、あとは男ばっかり。

髪結いをしてた母さんは忙しくて、姉さんが家のことをしてくれていた。

俺は末っ子で、姉さんが俺を育ててくれたようなもんだ。

昨日、小さい頃よく食べた、芋の煮っころがし作ってくれてて、懐かしくなったなぁ。

 

姉さんが嫁いだときは、さみしかったけどな。

 

昨日、一緒に酒が飲めて、たくさん話せて、楽しかったよ。

 

 

姉さんは旦那と一緒に田んぼをしている。

越次郎さんの作る米はとても美味しい、と姉さんは嬉しそうに言っていた。

 

姉さんが幸せそうで、本当に良かった。

 

 

 

俺は、なにしてたんだろ。

ふらふらふらふらしてて。

嫁も、いなくて独り者。

仕事しては辞めて、の繰り返し。

まぁ、今も仕事辞めてヒマになったから越後まで来たんだけど。

 

このまま越後に住むってのも、いいかもしれないな。

畑や田んぼはしたことねぇから、なにしよう?

 

あ、料理!

 

料理屋で働こう。

ちょっとだけ、板前してたこともあるからな。

花のお江戸で板前してたって言えば、雇ってもらえそうだ。

そんで、そこで働く娘さんと恋仲になって…。

でも、板長の娘には手ぇ出したらダメだ。

跡継ぎなんて荷が重すぎる。

 

んで、5年ぐらい修行したら、小さな料理屋でも始めようかね。

夫婦2人でこじんまりした店を切り盛り。

ああ、いいねぇ。

たまに休んで江戸に行き、食べ歩いて、店に帰ってきたら、食べてきた料理を作ってみる。

 

「これおいしくできたねぇ。江戸で食べたのよりずっとおいしいよ」

「そうか。良かった」

「ほんと、おまえさんの作る料理って美味しいわ。一緒になって幸せだよ」

「俺もだよ、おまつ…」

「おまえさん…」

 

 

っかーーーー。たまんねぇなぁ。

これだよこれ。

これに決まりだ。

早く店を決めて、働いて、おまつと一緒になって、小料理屋だ!

おまつが待ってる!

ん?おまつって誰だよ。

嫁の名か。

おまつじゃなくてもいい。

誰でもウェルカム!

いや、誰でもってわけにはいかねぇなぁ。

小料理屋だからな、愛想がよくねぇとダメだ。

太りすぎもよくねぇぞ。

店は小さいからな、あちこちぶつかっちまう。

愛想が良くて器量も良しで働きもの。

ああ、いいねぇ。

夢が広がるねぇ。

これからが楽しみだ…

 

 

 

って、俺、今、井戸に落ちてるんだよな。

井戸に落下なう。

まだ下まで落ちねぇのかよ。

アレか。

死ぬときに今までの出来事が、走馬燈のように…っていうアレか。

つーか、走馬燈どころか、これからのことまで考えちまったよ。

あーあ、おまつに会えねぇのか。

いやいや、おまつって名じゃなくてもいいんだが。

愛想よし器量よしの俺の嫁に会えないなんて。

残念無念。

 

ああ、なまぬるい水の匂いがしてきた。

そろそろ、落ちるのか…

このまま終わりか…

いやだよ、まだ、やりたいことが…

 

 

 

 

 

びちゃっ

 

 

 

 

「ありゃ、やだねぇ。絞るのゆるくて水が顔にたれちまったよ」

 

 

「ごめんね、京太郎。今、拭くからね」

 

 

ああ、姉さん。

俺、ついに死んじまったのか。

井戸から引き上げられて、姉さんが顔を拭いてくれてるのか…

 

って痛てーな!

強くこすりすぎじゃね?

 

「痛って!」

思わず声が出た。

 

ん?

声が

出た。

 

「あ、ゴメン。起こしちゃってゴメンね」

 

目の前に姉さん。

 

あれ、俺

生きてる?

 

 

「畑から帰ってきたらさ、あんたが、うーんうーん唸りながら寝てたから、熱でもあるんじゃないかと思って、心配したよ」

 

え、寝てた。

夢?

どこから?

ああ、越次郎さんが田んぼに行ってから横になったっけ。

じゃあ、俺は井戸には行ってないってことか。

 

井戸、気になる。

 

姉さんに聞いてみるか。

「姉さん、新之助が俺と一緒に井戸に行きたいって言ってたみたいだけど、俺、全然覚えてねぇんだわ。井戸になんかあるのかい?」 

 

「ん?その話、誰から聞いたんだい?」

 

「え、越次郎さんだけど…」

 

姉さんは、笑いながら言った。

「井戸じゃなくて、江戸!

このあたりの人は、『い』と『え』を反対に言っちゃうのよ。

新之助は、あんたと一緒に江戸に行きたいって言ってるのさ。

越次郎さんはね、特になまりがひどいんだよ。

あたしも最初全然なに言ってるんだか分からなかったのよね」

 

「へっ?

井戸じゃなくて、江戸?

ってことは、新之助は俺と江戸に行きてぇってことかい?」

 

「そうだよ。あんた、ホントに昨日のこと覚えていないんだねぇ。

あんたも、いいよって言ってたんだよ」

 

なんだってー!?

「俺、越後で料理の修行して、愛想良し器量よしの娘、おまつと所帯を持って、小料理屋をして繁盛させる予定なんだけど…」

 

「はぁ?なんだいそりゃ。そんな夢みていたのかい。おかしいねぇ。アハハッ…ハハッ。笑いがとまらないね」

姉さんはゲラゲラ笑ってる。

 

ああ、うっかり言ってしまった…

 

「ああー、おかしい。

でもさ、新之助はあんたと江戸に行くのを楽しみにしてるんだから、連れていっておくれよ。

あんたも、おとっつあんおっかさん、兄さんたち、仲間たちに、越後に行くってあいさつしておいで。

そんで、また一緒に帰ってきて、働きたい店で修行すりゃいいじゃないか」

 

なるほど。

そりゃいい考えだ。

そうしよう。

「ああ、そうするわ。んじゃ明日、出発するかな」

 

「ねぇ京太郎。さっき言ってた、おまつって誰よ。

恋仲のお嬢さんかい?」

 

そこをいまさらつっこまないでくれ!

「いや、夢の中に出てきただけ…」

 

「あらそう。

あたしの友達の妹がおまつって言うんだけど、江戸から帰ってきたら会ってみるかい?」

 

えっ。

おまつ。

おまつがホントにいるのか!

「えっ、もちろんだとも。今すぐにでも会ってみてぇよ!」

 

「ダメダメ。先に江戸に行ってきてから。それからだよ」

 

「はいはい…」

 

 

 

 

さてさて、この後、京太郎は

江戸に行き、無事に越後に戻り、おまつと出会い、無事結婚。

修行したのちに念願の小料理屋をはじめましたとさ。

めてたしめでたし。

 

 

 

 

落語っぽく書きたかったんですがね…とほほ。

 江戸時代も全然詳しくないので、言葉遣いも、なんとなくこんな感じ?って書きました。すみません。

まぁ、なんとか書き終えたから、いっか。

3000文字書いたからいいや。

自分に甘いのですよ。

もう、甘々のあまちゃんですわ。

甘いの好物だし。

最近は、毎日ハチミツなめてます。

ネズミーランドの超有名黄色いくまさん並みにペロッペロ。

ほら、喉にいいらしいですよ。ハチミツ。

 

新潟市近郊では、ほんとに「い」と「え」を逆に言う人がいます。

方言っていっていいのかな?

年配の人に多い。

本人は、「い」と言ってるつもりだけど「え」に聞こえるんです。

イチゴをえちご、とか。

色鉛筆がエロインピツ、とか。

エロインピツって。ねぇ。

ピンクから紫のグラデーションの24色セットで決まりですよ。

 

実は、この話ボツバージョンがありまして。

登場人物同じ、オチ(井戸と江戸を間違えた)は同じ。

違うところは、主人公が姉さんです。

もし良ければこちらもどうぞ。

 

 

mameten0010.hatenablog.jp

 

 

長くなりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました!